パートナーと築く資産

LGBTQ+カップルが子育てを考えるための資金計画:養育費、教育費、将来設計

Tags: 子育て資金, 教育費, 養育費, ライフプラン, LGBTQ+

はじめに:未来への一歩、子育ての資金計画を考える

パートナーとの将来を考えたとき、子育てという選択肢を検討されるLGBTQ+カップルもいらっしゃるでしょう。新しい家族を迎え、共に成長していくことは、何物にも代えがたい喜びをもたらします。しかし同時に、子育てには様々な費用がかかり、計画的な準備が必要となります。

特にLGBTQ+カップルの場合、家族の形成方法が多様であることや、法的な関係性によって利用できる公的制度が異なる可能性があるため、一般的な子育て資金計画とは異なる視点も必要になります。この記事では、LGBTQ+カップルが子育てを安心して進めるための資金計画について、具体的に考えるべきポイントを解説します。

子育てにかかる費用全体像とLGBTQ+カップルが考慮すべきこと

子育てには、日々の生活費に加えて、養育費や教育費など、多岐にわたる費用が発生します。これらの費用は、お子様が独立するまで継続的にかかるものです。

一般的に子育てにかかる主な費用項目は以下の通りです。

これらの費用は、お子様の成長段階や進路によって大きく変動します。特に教育費は、公立か私立か、大学進学の有無によって数百万円から数千万円単位で変わる可能性があります。

LGBTQ+カップルが子育てを考える際には、これらの一般的な費用に加え、家族を形成するための初期費用や、法的な関係性が公的支援に与える影響などを考慮に入れることが重要です。

LGBTQ+カップルが利用しうる子育ての方法と費用

LGBTQ+カップルが家族を形成する方法は複数あり、それぞれにかかる費用や期間が異なります。主な方法と、資金計画において考慮すべき点を見てみましょう。

1. 特別養子縁組

実の親子ではない関係性において、法的に実子と同じ親子関係を結ぶ制度です。家庭裁判所の審判を経て成立します。

2. 里親制度

様々な事情により家庭で暮らせないお子様を、一定期間または長期にわたり家庭に迎え入れ、養育する制度です。

3. 生殖医療(不妊治療)

AID(非配偶者間人工授精)や体外受精など、医療的な手段を用いてお子様を授かる方法です。レズビアンカップルやトランスジェンダーのカップルなどが選択肢として検討することがあります。

公的な支援制度と法的な関係性の影響

子育て世帯を支援するための公的な制度として、児童手当や医療費助成などがあります。これらの制度は、家計の大きな助けとなります。

これらの公的支援の受給資格は、多くの場合、お子様との法的な親子関係に基づいています。例えば、特別養子縁組によって法的な親子関係が成立している場合は、実子と同様に支援の対象となります。しかし、法的な親子関係がないパートナーは、たとえ事実上お子様を養育していても、これらの支援の受給資格を持たない場合があります。

パートナーシップ制度を利用している場合でも、それ自体が直接的に国の児童手当等の受給資格に結びつくわけではありません。各自治体が独自に実施するパートナーシップ制度におけるファミリーシップ登録などが、一部の行政サービス利用に有利に働くことはありますが、基本的な国の子育て支援は法的な親子関係や生計維持関係に基づいて判断されます。

したがって、どのような方法で子育てをするか、そしてお子様との法的な関係性をどう築くか(養子縁組などを行うか)が、利用できる公的支援やその手続きに影響することを理解しておく必要があります。

教育費の準備方法と選択肢

子育て費用の中でも特に大きな割合を占めるのが教育費です。計画的に準備を始めることが重要です。

教育費の準備方法にはいくつか選択肢があります。

どの方法を選択するにしても、お子様の将来の進路をある程度想定し、必要な資金目標を設定することが第一歩となります。

万が一の場合に備える:生命保険と遺言

パートナーやお子様との安心できる将来のためには、万が一の場合の備えも重要です。

生命保険

一家の収入を支えるパートナーに万が一のことがあった場合に備え、生命保険への加入を検討しましょう。保険金をお子様の将来の養育費や教育費に充てることができます。

生命保険の保険金受取人は、原則として戸籍上の配偶者や二親等以内の血族が指定できます。LGBTQ+カップルの場合、法的な関係性がないパートナーを保険金受取人に指定できるかどうかは、保険会社によって判断が異なります。多くの保険会社では、事実婚関係にあるパートナーを受取人に指定できる運用を始めていますが、要件や手続きは様々です。必ず保険会社に確認し、必要であればお子様を契約者や受取人とするなどの工夫も検討しましょう。

遺言書の作成

ご自身に万が一のことがあった際、パートナーやお子様が困らないように、遺言書を作成することは非常に有効です。特に、法的な親子関係がないお子様や、相続権がないパートナーに財産を遺したいと考える場合には、遺言書が不可欠となります。

遺言書には、誰にどの財産を相続させるかを具体的に指定できます。これにより、ご自身の意思に基づいた財産の承継を実現できます。ただし、遺留分(兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障される遺産の取り分)を侵害しないように配慮が必要です。遺言書の作成には、法的に有効な形式(自筆証書遺言、公正証書遺言など)で作成する必要があり、専門家(弁護士や行政書士)に相談することをお勧めします。

専門家への相談を検討する

子育て資金計画や万が一の備えは、ご家庭の状況によって最適な方法は異なります。特にLGBTQ+カップル特有の事情(法的な関係性、家族形成の方法など)を考慮に入れると、専門的な知識が必要になる場面が多くあります。

専門家の中には、LGBTQ+カップル固有の課題に理解があり、適切なアドバイスを提供できる方も増えています。インターネット検索や紹介などを通じて、信頼できる専門家を探すことから始めてみるのも良いでしょう。

まとめ:計画的な準備で安心して未来を築く

LGBTQ+カップルが子育てを安心して実現するためには、早い段階からの計画的な資金準備が欠かせません。子育ての方法によってかかる初期費用や公的支援の適用が異なること、教育費の準備、そして万が一の場合に備える生命保険や遺言書の活用など、様々な角度から検討すべき点があります。

法的な関係性によって利用できる制度が異なる場合があるため、不明な点は専門家(FP、弁護士、税理士など)に相談し、ご自身の状況に合わせた最適なプランを立てることが重要です。

パートナーと共に将来について話し合い、具体的な行動を起こすことで、安心して子育てを始め、豊かな未来を築くことができるでしょう。この記事が、その一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。