パートナーと築く資産

相続権がなくても大丈夫:LGBTQ+カップルのための遺言・生前贈与活用ガイド

Tags: LGBTQ+, 相続, 遺言, 生前贈与, 資産形成, パートナーシップ, ライフプラン

はじめに:パートナーに財産を残すためのステップ

パートナーとの関係を大切に育み、将来を共に歩むことをお考えのLGBTQ+カップルの皆様にとって、万が一の際にパートナーが経済的に困らないよう、財産を託す方法は重要な関心事の一つではないでしょうか。現行法上、同性カップルには法律上の婚姻による相続権が認められていないため、何も対策を講じなければ、長年連れ添ったパートナーであっても、法的に財産を引き継ぐことは原則としてできません。

しかし、法的な相続権がないからといって、大切なパートナーに財産を残す手段がないわけではありません。この記事では、LGBTQ+カップルがパートナーに財産を確実に託すための有効な方法として、「遺言」と「生前贈与」に焦点を当て、それぞれの特徴や活用方法、検討すべき点について詳しく解説します。これらの制度を正しく理解し、ご自身の状況に合わせて活用することで、将来への不安を軽減し、安心してパートナーとの生活を続けるための一助となれば幸いです。

遺言を活用する:あなたの意思を形に

遺言は、ご自身の死後に誰にどのような財産をどのように渡したいか、といった最終的な意思表示を法的に有効な形で残すための手段です。法的な相続権がないパートナーにも、遺言によって財産を「遺贈(いぞう)」することができます。遺贈とは、遺言によって法定相続人以外の人に財産を無償で譲り渡すことを指します。

LGBTQ+カップルにとって遺言が重要な理由

遺言の種類と特徴

主に以下の3種類があります。

パートナーへの遺贈を確実に実行するためには、内容の明確性や法的な有効性が非常に重要です。そのため、公正証書遺言で作成することが強く推奨されます。

遺言作成時の注意点

生前贈与を活用する:生きている間に財産を移転

生前贈与は、ご自身が生きている間に、ご自身の財産をパートナーに無償で譲り渡すことです。遺言が死後の財産承継の意思表示であるのに対し、生前贈与は生前の財産移転の手段です。

LGBTQ+カップルにとって生前贈与が選択肢となる理由

生前贈与の方法と贈与税

贈与には贈与税がかかる可能性があります。贈与税は、原則として贈与を受けた側(受贈者)が支払います。

贈与を行う際は、後々のトラブルを防ぐため、贈与の意思表示と受贈者の受諾があり、実際に財産の引き渡しが行われたことを証明できるよう、贈与契約書を作成することが推奨されます。特にまとまった金額を贈与する場合や、毎年継続的に贈与を行う場合は、贈与契約書の作成が非常に重要です。

生前贈与の注意点

遺言と生前贈与:どちらを選ぶべきか?または組み合わせる

遺言と生前贈与は、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。どちらか一方を選択することも、組み合わせて活用することも可能です。

組み合わせるメリット

遺言と生前贈与を組み合わせることで、それぞれの欠点を補い合うことが可能です。例えば、毎年の生活費などを生前贈与で行いつつ、自宅などの大きな財産は遺言で遺贈するといった方法が考えられます。

ご自身の財産状況、パートナーの年齢や状況、将来のライフプラン、そしてご自身の意向などを総合的に考慮して、最適な方法を選択することが重要です。

専門家への相談を検討しましょう

遺言や生前贈与は、法的な知識や税務に関する専門知識が必要です。ご自身の状況に合わせた最適な方法を選択し、手続きを間違いなく進めるためには、専門家への相談を強くお勧めします。

これらの専門家は、法制度や税制に精通しており、皆様の個別の状況に合わせて具体的なアドバイスを提供してくれます。特に、LGBTQ+カップルの資産承継やライフプランニングに理解のある専門家を選ぶことで、より安心して相談を進めることができるでしょう。インターネットで「LGBTQ+ フレンドリー 弁護士」「同性カップル 相続 FP」といったキーワードで検索したり、NPO法人や支援団体に相談したりすることで、情報が得られる場合があります。

まとめ:安心して将来を迎えるために

LGBTQ+カップルにとって、法的な相続権がないことは、パートナーへの財産承継において課題となる場合があります。しかし、「遺言」による遺贈や、「生前贈与」といった法的に認められた手段を適切に活用することで、大切なパートナーに財産を確実に託すことが可能です。

遺言は、ご自身の死後に財産を渡したいという明確な意思表示を残すための手段であり、特にまとまった財産を承継させる場合に有効です。生前贈与は、ご自身が生きている間に計画的に財産を移転させる手段であり、パートナーが現在必要とする資金を提供したり、長期的な税金対策を講じたりするのに役立ちます。

どちらの方法を選択するにしても、また両方を組み合わせて活用するにしても、法的な要件を満たし、将来のトラブルを防ぐためには、正確な知識に基づいた適切な手続きが必要です。まずはご自身の財産状況やパートナーとの将来について話し合い、どのような方法が最適か検討を始めてみてはいかがでしょうか。そして、必要に応じて専門家のサポートを得ながら、安心してパートナーとの未来を築くための一歩を踏み出してください。

この情報が、皆様が安心して資産形成や相続について考えるための一助となれば幸いです。