パートナーと築く資産

LGBTQ+カップルが不動産(マイホーム)を購入する際の資金計画と注意点:共同名義、ローン、手続き

Tags: 不動産購入, マイホーム, 住宅ローン, 共同名義, 資金計画

はじめに

パートナーとの将来を共に考え始める中で、「マイホームを持ちたい」という夢をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。マイホームの購入は、人生の中でも特に大きなライフイベントの一つであり、多額の資金が必要となるため、計画的な準備が不可欠です。

特にLGBTQ+カップルの場合、法的な関係性が異性間夫婦とは異なることから、不動産の共同所有や住宅ローンの利用、そして将来の相続などについて、事前に検討しておくべき特有の注意点が存在します。

この記事では、LGBTQ+カップルがマイホーム購入を検討する際に知っておくべき資金計画の立て方、住宅ローンの選択肢と注意点、共同名義にする場合のメリット・デメリット、そして購入後の手続きについて、分かりやすく解説します。安心してパートナーとの住まい探しを進めるための一助となれば幸いです。

マイホーム購入に向けた資金計画の重要性

マイホーム購入の第一歩は、現実的な資金計画を立てることです。購入できる物件価格の上限を決めるためにも、以下の要素を考慮に入れる必要があります。

これらの費用に加え、将来のライフイベント(例:教育費、リタイアメント資金など)を見据えた資産形成とのバランスも考慮し、パートナーと十分に話し合いながら資金計画を立てましょう。

LGBTQ+カップルが利用できる住宅ローンと注意点

多くの金融機関では、住宅ローンの契約者を「法律上の夫婦」としている場合があります。しかし、近年ではLGBTQ+カップルにも対応した住宅ローン商品が増えてきており、パートナーシップ証明書などを提出することで、夫婦同等の条件で借り入れが可能になるケースがあります。

LGBTQ+カップルが検討できる主な住宅ローンの組み方には、以下のような選択肢があります。

  1. どちらか一方が単独で借りる(単独債務):

    • 収入の高い方が契約者となり、一人でローンを組む方法です。
    • メリット: 手続きが比較的シンプルです。
    • デメリット: 借り入れ上限額が契約者一人の収入で決まるため、希望する借入額に満たない可能性があります。また、団体信用生命保険(団信)は契約者のみに適用されるため、万が一の際のリスクをパートナーが負うことになります。
  2. ペアローン:

    • パートナーそれぞれが主債務者として、別の住宅ローン契約を結ぶ方法です。一つの物件に対して、二つのローンが存在する形になります。
    • メリット: 二人分の収入を合算して借入額を計算できるため、より多額の借り入れが可能になる場合があります。それぞれが団信に加入できます。
    • デメリット: 契約が二つになるため、手続きが煩雑で、諸費用もそれぞれにかかります。パートナーの片方が亡くなった場合、亡くなった方のローン残高は団信で弁済されますが、残された方のローン返済はそのまま続きます。
  3. 連帯債務:

    • 主債務者ともう一方が「連帯債務者」となり、二人で一つのローン契約を結び、返済義務を負う方法です。ペアローンと異なり、契約は一つです。
    • メリット: ペアローンと同様に、二人分の収入を合算して借入額を計算できる場合があります。契約が一つで済むため、手続きは比較的シンプルです。
    • デメリット: 金融機関によっては、主債務者しか団信に加入できない場合があります。その場合、連帯債務者が亡くなってもローン残高は減らず、残された主債務者が一人で全額返済する義務を負います。団信の加入条件は金融機関によって異なるため、事前にしっかりと確認が必要です。

【重要な注意点】

不動産の名義と共同名義の注意点

マイホームを購入する際、不動産の名義をどのようにするかは非常に重要です。主に「単独名義」と「共同名義」の選択肢があります。

  1. 単独名義:

    • パートナーのどちらか一方のみを登記名義人とする方法です。
    • メリット: 将来、不動産を売却する際や、名義人が亡くなった際の相続手続きが比較的シンプルになります。
    • デメリット: 登記名義人でないパートナーが資金を一部出した場合、その資金は名義人への「贈与」とみなされ、贈与税が発生する可能性があります。贈与税を回避するには、資金提供の事実を証明する書類(資金移動の履歴など)を準備し、正当な理由を説明できる必要があります。また、名義人が亡くなった場合、非相続人であるパートナーは原則として不動産の所有権を直接引き継ぐことはできません。(遺贈などの対応が必要となります)
  2. 共同名義:

    • パートナー二人を登記名義人とする方法です。それぞれの所有割合を「持分」として登記します。持分は、購入資金の負担割合に応じて定めるのが一般的です。
    • メリット: 資金を出し合った割合に応じて名義を共有することで、贈与とみなされるリスクを回避できます。パートナーシップ関係が対外的に明確になりやすい側面もあります。
    • デメリット:
      • 手続きの煩雑さ: 不動産売却やリフォーム、賃貸に出すなど、不動産に関する重要な決定は、原則として共有者全員の同意が必要になります。パートナーの一方が反対すると手続きが進まなくなる可能性があります。
      • 住宅ローンとの関連: 住宅ローンを共同で組む場合(ペアローンや連帯債務)は、共同名義とすることが一般的です。しかし、単独債務で共同名義にする場合は、資金負担割合と借入金の負担割合を明確にし、贈与とみなされないよう注意が必要です。
      • 相続時の問題: パートナーの一方が亡くなった場合、亡くなった方の持分は相続の対象となります。非相続人であるパートナーは、遺言書がない場合、原則として亡くなったパートナーの持分を相続することはできません。これにより、不動産が共同名義のまま、存命のパートナーと亡くなったパートナーの法定相続人(親族など)との共有状態となり、その後の管理や売却が複雑になる可能性があります。

共同名義とする場合は、将来的なリスク(売却や相続など)を十分に理解し、パートナーと話し合い、必要に応じて遺言書の作成や家族信託の活用なども検討することが重要です。(遺言や家族信託については、当サイトの別の記事もご参照ください。)

不動産購入後の手続き

マイホーム購入後には、不動産の登記手続きが必要です。これは通常、司法書士に依頼して行います。

これらの登記手続きは、不動産取引において極めて重要であり、専門知識が求められます。信頼できる司法書士を選び、手続きを正確に進めることが大切です。

また、不動産取得後には、不動産取得税の申告・納付、毎年かかる固定資産税・都市計画税の納付なども必要になります。

専門家への相談を検討する

マイホーム購入は専門的な知識が多岐にわたるため、自分たちだけで全てを判断するのは難しい場合があります。安心してプロセスを進めるために、様々な専門家の力を借りることを検討しましょう。

近年では、LGBTQ+カップルへの理解がある専門家も増えてきています。当事者の状況に寄り添ったアドバイスを得るためにも、可能であればLGBTQ+フレンドリーであることを公表している専門家や、紹介を受けて相談するのも良いでしょう。

まとめ

LGBTQ+カップルがマイホームを購入することは、パートナーシップをより強固にし、共通の未来を築く素晴らしい一歩です。しかし、異性間夫婦とは異なる法的な側面があるため、事前の計画と準備が非常に重要になります。

特に、資金計画、住宅ローンの選択、そして不動産の名義の決め方は、将来の生活や相続にも大きく影響するため、パートナーと率直に話し合い、お互いの希望やリスクに対する考えを確認することが不可欠です。

この記事でご紹介した情報を参考に、まずは資金計画を具体的に立て、利用できる住宅ローンについて金融機関に相談してみてください。共同名義にするか単独名義にするか、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、パートナーにとって最適な選択を検討しましょう。

必要に応じて、ファイナンシャルプランナーや司法書士、税理士といった専門家のサポートを受けることも、安心してマイホーム購入を進めるための賢明な方法です。

マイホーム購入という大きなイベントを通じて、パートナーとの絆を一層深め、安心できる未来をデザインしてください。