パートナーと築く資産

LGBTQ+カップルが安心して家計を共有するために:共同口座の活用と注意点

Tags: 家計管理, 共同口座, 資産管理, LGBTQ+カップル, パートナーシップ

はじめに:LGBTQ+カップルの家計管理と共同口座

パートナーとの生活を営む上で、家計の管理は非常に重要な要素です。特にLGBTQ+カップルの場合、法的な関係性が多様であるため、どのように家計を共有し、資産を管理していくかについて、独自の課題や検討事項が生じることがあります。

共通の財布を持つ感覚で利用されることが多い「共同口座」は、家計の共有を考える上で有効な手段の一つですが、その利用にあたっては、いくつかの注意点があります。この記事では、LGBTQ+カップルが安心して家計を共有し、共同口座を効果的に活用するための方法と、知っておくべき注意点について詳しく解説します。

LGBTQ+カップルにおける家計共有の形態

家計の共有方法は、カップルによって様々です。主に以下の3つの形態が考えられます。

  1. 個別管理: 各自が収入・支出を管理し、住居費や食費など共有する費用のみを分担する最もシンプルな方法です。個人の自由度が高い反面、資産形成や大きな支出に関する共通認識を持ちにくい場合があります。
  2. 一部共有: 共通の生活費口座などを設け、一定額を出し合って管理し、それ以外の貯蓄や個人的な支出は各自で管理する方法です。個別管理と全体共有の中間的な方法と言えます。
  3. 全体共有: 収入を全て合算し、そこから生活費、貯蓄、投資などを行う方法です。お互いの収入や支出が明確になり、共有の目標に向かって資産形成を進めやすい反面、プライベートな支出について話し合いが必要になる場合があります。

どの方法を選択するかは、お二人の価値観やライフスタイル、将来設計によって異なります。大切なのは、お互いが納得し、安心して続けられる方法を選ぶことです。

共同口座とは? LGBTQ+カップルが利用する際の考慮事項

「共同口座」という名称の銀行口座は、日本の多くの金融機関では提供されていません。一般的に「共同口座」と呼ばれるのは、どちらか一方の名義で開設された口座を、パートナーと共有して使用する形態や、任意団体名義で開設した口座を共有する形態などを指すことが多いです。

LGBTQ+カップルがこうした形態の共同口座を利用する際には、いくつかの重要な考慮事項があります。

1. 口座名義の問題

2. 贈与税のリスク

単独名義の口座を共同財布として使用している場合、名義人ではないパートナーがその口座に入金したり、口座から出金して使用したりする行為が、「贈与」とみなされる可能性があります。特に、パートナーの収入を名義人の口座に入れ続けるなど、実質的な名義人がパートナーであるにも関わらず、名義が一方である状態が続くと、税務署から指摘を受けるリスクが高まります。

生活費として都度必要な金額を出し合って管理する分には問題となりにくいですが、大きな金額の移動や、資産形成を目的とした貯蓄・投資資金をこの口座で行う場合は注意が必要です。贈与とみなされないためには、お金の出所の記録を残す共有資産であることを明確にするなどの対策が考えられます。

3. パートナーの死後手続き

単独名義の口座の場合、名義人が亡くなると、その口座は相続財産となり、原則として相続人(配偶者や子、親など)以外は手続きができなくなります。法的な婚姻関係にないLGBTQ+カップルの場合、パートナーは原則として相続人には含まれません。そのため、口座が凍結されると、残されたパートナーは口座から生活費を引き出すことができず、その後の手続きに大きな支障をきたす可能性があります。

このリスクを回避するためには、名義人ではないパートナーが資金にアクセスできる別の仕組みを準備しておくことが重要です。

安心して家計を共有するための具体的な対策

共同口座のメリットを享受しつつ、上記のようなリスクを軽減するために、以下の対策を検討することが推奨されます。

  1. 家計に関する明確なルール作り: どの範囲まで家計を共有するのか、それぞれの役割分担、貯蓄目標などを二人で具体的に話し合い、文書化しておくことが望ましいです。
  2. お金の動きの記録: 共同財布として使用する口座への入金者、金額、出金の目的などを家計簿アプリやスプレッドシートなどを活用して記録します。これにより、お金の出所を明確にし、贈与とみなされるリスクを減らすことができます。
  3. 共有資産であることの明確化: 共同で購入した不動産や自動車、家具などの高価なものについては、購入資金の出所や共有名義であること(可能であれば)を証明できる書類を保管しておくことが重要です。預貯金についても、二人のお金であるという意思を公正証書などで明確にすることも検討できます。
  4. 共同口座以外の選択肢の検討:
    • パートナーシップ契約の活用: 一部の自治体のパートナーシップ制度では、公正証書を作成することで、財産に関する取り決めをより強固にすることができます。
    • 任意後見制度や死後事務委任契約: 口座名義人が意思能力を喪失したり、亡くなったりした場合に備え、パートナーが財産管理や死後の手続きを行えるようにする契約を検討します。
    • 家族信託: 特定の財産(例えば共有で購入した不動産など)を、お二人のため、または残されたパートナーのために管理・運用・承継させる仕組みとして、家族信託を検討することも可能です。
    • 二人の名義でそれぞれ口座を持つ: 一方が倒れたり亡くなったりした場合でも、もう一方の口座の資金で対応できるように、それぞれが一定の資金を管理する口座を持っておくことも現実的な対策です。
  5. 専門家への相談: 共同口座の利用方法や家計管理に関する不安、税務や相続に関する疑問がある場合は、税理士やファイナンシャルプランナー、弁護士といった専門家に相談することを検討してください。LGBTQ+のカップルの事情に理解のある専門家を選ぶと、より安心して相談を進めることができるでしょう。

まとめ:安心して家計を共有するために

LGBTQ+カップルが家計を共有し、共同口座を効果的に活用するためには、法的な側面や将来的なリスクを理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。共同口座は便利な反面、名義の問題や贈与税のリスク、死後手続きの困難さといった課題も存在します。

これらの課題に対して、お二人で家計に関するルールを明確にすること、お金の記録をしっかり残すこと、そして必要に応じてパートナーシップ契約、任意後見制度、死後事務委任契約、家族信託といった他の制度の活用を検討することが有効な対策となります。

家計管理は、お二人の将来を共に築いていくための大切な一歩です。この記事でご紹介した情報が、LGBTQ+カップルのお二人が安心して家計を共有し、より豊かな未来を設計するための一助となれば幸いです。不安な点や疑問点があれば、専門家への相談もぜひ検討してみてください。