LGBTQ+カップルが資産形成・相続を専門家に相談する:相談先選びと進め方
はじめに:なぜ専門家への相談が必要なのでしょうか
将来に向けて資産形成を進めたい、パートナーとの関係を法的に安定させたい、万が一の時に備えたい。このようなお考えをお持ちのLGBTQ+カップルにとって、専門家への相談は非常に有効な手段となり得ます。
法制度や金融商品は複雑であり、ご自身だけで最適な選択を行うことは容易ではありません。特に、現行法における異性間夫婦とは異なる法的な立ち位置に起因する課題(例:パートナーシップ制度の限界、相続権の有無など)を抱える場合、専門家の知識や経験が、より安心で確実な将来設計をサポートしてくれます。
この記事では、LGBTQ+カップルが資産形成や相続に関して、どのような専門家に相談できるのか、専門家を選ぶ上でのポイント、そして具体的な相談の進め方について解説します。
どのような専門家に相談できるのでしょうか
資産形成や相続に関する相談内容は多岐にわたります。そのため、相談内容に応じて適切な専門家を選ぶことが重要です。主な専門家とその役割は以下の通りです。
-
ファイナンシャルプランナー(FP):
- 家計の見直し、貯蓄計画、資産運用の方法、保険の見直し、住宅購入計画、教育資金計画、老後資金計画など、生涯にわたるお金に関する幅広い相談に対応します。
- 特定の金融商品を販売するのではなく、独立した立場でアドバイスを提供するFP(IFAや独立系FPなど)を選ぶと、より客観的な視点からの提案が期待できます。
- LGBTQ+カップルのライフプランに寄り添った資金計画や、パートナーシップ制度を利用している場合の公的な保障などについても相談できる場合があります。
-
弁護士:
- 法的な問題全般を取り扱います。相続においては、遺言書の作成・執行、遺産分割協議、相続放棄、遺留分侵害額請求など、相続発生後の紛争解決や法的手続きの代理を行います。
- 生前対策としては、公正証書遺言の作成サポートや任意後見契約に関する相談なども可能です。
- 同性カップル間の契約(例えば、共同で不動産を購入する際の権利関係の明確化など)や、法的な効力を持たせるための手続きについてアドバイスを求めたい場合に適しています。
-
税理士:
- 税金に関する専門家です。相続税、贈与税、不動産取得税などの税務相談や申告書の作成を行います。
- 相続や贈与を検討する際に、事前に税理士に相談することで、節税対策や納税資金の準備について具体的なアドバイスを得られます。
- 不動産など、評価が難しい資産に関する相続税評価についても専門的な知識を持っています。
-
司法書士:
- 不動産の登記手続き、商業登記手続きを行います。
- 相続においては、不動産の名義変更(相続登記)を依頼できます。
- 遺言書の検認手続きや、相続放棄の手続きをサポートすることもあります。
-
行政書士:
- 官公署に提出する書類の作成や手続きの代理を行います。
- 遺言書の作成サポート(法的なアドバイスは弁護士の領域ですが、形式的な作成支援や公証役場での手続き支援など)、内容証明郵便の作成、任意後見契約の締結に関する書類作成などを依頼できます。
専門家を選ぶ上でのポイント
信頼できる専門家を選ぶことは、安心して相談を進める上で非常に重要です。以下の点を参考に検討してください。
- 専門分野と実績: 相談したい内容に特化した専門家を選びましょう。例えば、相続問題であれば相続案件の実績が多い弁護士や税理士、総合的なライフプランであれば経験豊富なFPなどです。
- 資格と所属団体: 国家資格を持つ専門家であるか、所属する専門家団体の情報を確認します。
- 費用体系の明確さ: 相談料、着手金、報酬などの費用体系が明確に提示されているかを確認しましょう。初回相談を無料としている専門家もいます。
- コミュニケーションと相性: 専門家の説明が分かりやすいか、質問しやすい雰囲気かなど、円滑なコミュニケーションが取れるかを確認します。安心して何でも話せる相手かどうかも重要です。
- LGBTQ+への理解と対応: これが最も重要なポイントの一つかもしれません。自身の状況や家族構成についてオープンに話せるか、偏見なく話を聞いてくれるか、LGBTQ+カップル特有の法的な課題やニーズについて知識があるかを確認することが大切です。過去にLGBTQ+カップルの相談実績があるかなどを直接尋ねてみても良いでしょう。
具体的な相談の進め方
- 相談内容の整理: どのような課題や疑問について相談したいのかを具体的に整理しておきましょう。「資産形成を始めたいが何から手を付ければ良いか分からない」「パートナーに確実に資産を引き継がせたい」「もしもの時の医療同意を任せたい」など、漠然としたものでも構いません。
- 情報収集と候補探し: インターネット検索、知人の紹介、専門家団体のリストなどを利用して、相談内容に合った専門家を探します。この際、「LGBTQ+フレンドリー 弁護士」「同性カップル 資産運用 FP」といったキーワードで探すことも有効です。
- 問い合わせ・予約: 候補となる専門家に問い合わせをし、相談内容を簡単に伝えて予約を取ります。この際に、LGBTQ+のカップルであることや、相談内容が同性パートナーとの関係に関わるものであることを伝えておくと、専門家側も準備しやすくなります。
- 初回相談: 相談内容に関する資料(収入や支出が分かるもの、保険証券、不動産の登記簿謄本、既存の契約書など)を持参し、正直に状況を説明します。質問したいことを事前にリストアップしておくと漏れなく確認できます。専門家との相性や、説明の分かりやすさ、費用についても確認しましょう。
- 正式な依頼: 初回相談を通じて信頼できると感じた専門家に、正式に業務を依頼します。業務内容、費用、期間などを明確にした契約書を交わすことが一般的です。
- 継続的な関係: 資産形成や相続は一度きりの問題ではない場合が多く、ライフステージの変化に応じて見直しが必要になります。信頼できる専門家を見つけ、定期的に相談できる関係を築くことで、長期的な安心が得られます。
LGBTQ+フレンドリーな専門家を探すヒント
LGBTQ+に関する理解があり、安心して相談できる専門家を見つけることは、特に重要です。以下の方法が役立つ場合があります。
- LGBTQ+支援団体やコミュニティからの紹介: 専門家とのネットワークを持つ支援団体に相談してみると、信頼できる専門家を紹介してもらえることがあります。
- インターネットでの情報検索: 「LGBTQ+フレンドリー」「同性パートナー」「にじいろ」といったキーワードと専門家種別(弁護士、FPなど)を組み合わせて検索します。専門家のウェブサイトに、LGBTQ+に関する記載があるか確認するのも有効です。
- 専門家検索サイトでの絞り込み: 一部の専門家検索サイトでは、LGBTQ+に関する対応の可否などで絞り込みができる場合があります。
- 初回相談での確認: 面談の際に、これまでの相談実績や、自身の状況への理解について率直に質問してみましょう。
まとめ
LGBTQ+カップルが資産形成や相続の計画を立て、安心して将来を迎えるためには、専門家のサポートが非常に心強い味方となります。ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士など、それぞれの専門家が持つ知識や経験は、皆さまの不安を解消し、具体的な一歩を踏み出すための大きな助けとなるでしょう。
この記事でご紹介した相談先の種類、専門家を選ぶ上でのポイント、そして具体的な相談の進め方を参考に、ぜひ信頼できる専門家を見つけてみてください。専門家との二人三脚で、大切なパートナーとの未来をしっかりと築いていくことを願っております。