パートナーと築く資産

パートナーとの資産を「見える化」し、守り育てる:LGBTQ+カップルのための実践的な管理計画

Tags: 資産管理, 資産形成, ライフプラン, 共同資産, LGBTQ

はじめに:パートナーとの資産について考える第一歩

将来の生活や、もしもの時に備える上で、ご自身の、そしてパートナーとの資産について具体的に考えることは非常に重要です。特にLGBTQ+カップルにおいては、法的な関係性による制約や、異性間カップルとは異なる考慮事項があるため、計画的な資産形成と管理が安心な未来を築くための鍵となります。

しかし、「資産について考える」と言っても、何から始めれば良いのか分からない、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。預貯金、保険、iDeCoやNISAといった投資、不動産など、様々な形がある資産をどう把握し、どう管理していけば良いのでしょうか。

この記事では、LGBTQ+カップルがパートナーとの資産を「見える化」し、将来の目標に向けて資産を「守り、育てる」ための実践的な管理計画を立てるステップをご紹介します。漠然とした不安を解消し、パートナーと共に一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。

ステップ1:資産の「見える化」を始める

資産管理計画の最初のステップは、まず現状を正確に把握することです。ご自身とパートナー、それぞれが現在どのような資産を持ち、どのような負債を抱えているのかを全てリストアップする「見える化」作業を行います。

なぜ見える化が必要なのでしょうか。それは、資産全体を把握することで、現在の家計の状況や資産構成が明らかになり、将来の目標達成に向けた課題や必要な対策が見えてくるからです。また、パートナーと互いの資産状況を共有することは、お二人の将来計画を具体的に話し合う上での重要な土台となります。

見える化の対象となる主な資産・負債の例を挙げます。

これらの資産・負債を、ご自身のもの、パートナーのもの、そして共同で所有しているもの(共同名義の預貯金口座や不動産など)に分けてリスト化します。エクセルなどの表計算ソフトを利用したり、市販の家計簿アプリや資産管理ツールを活用したりするのも良い方法です。

この段階で、例えば「生命保険に入っているけれど、パートナーが保険金を受け取れる設定になっているか分からない」「パートナーとの共同名義の資産がどれくらいあるか曖昧だった」といった、具体的な確認事項が見つかることがあります。

ステップ2:資産状況の分析と課題の特定

資産の見える化ができたら、次にその内容を分析します。

そして、LGBTQ+カップルとして考慮すべき点も含めて、現状の課題を特定します。

これらの分析と課題特定を通じて、「パートナーに確実に財産を残すためには遺言書が必要だ」「〇年後のリタイアに向けて、今の貯蓄ペースでは不十分なので投資を始める必要がある」といった、具体的な対策の方向性が見えてきます。

ステップ3:将来目標の設定と管理・運用計画の策定

資産状況と課題が明らかになったら、次は具体的な将来目標を設定し、それを達成するための管理・運用計画を策定します。

将来目標は、できるだけ具体的である方が計画を立てやすくなります。例えば、「5年後にマイホーム購入のために頭金として〇〇円を準備する」「20年後にリタイアし、年間〇〇円の生活費を確保できるよう資産を取り崩す」といった形です。パートナーとよく話し合い、お二人の価値観や希望に沿った目標を設定しましょう。

目標が設定できたら、その目標達成のための具体的な計画を立てます。

これらの計画は、お二人の資産状況、収入、ライフスタイル、そして将来の目標によって異なります。無理のない範囲で、かつ着実に目標に近づけるような計画を立てることが大切です。

ステップ4:計画の実行と定期的な見直し

計画を立てるだけでなく、実行に移すことが最も重要です。立てた計画に従って、貯蓄や投資を開始し、必要に応じて法的な手続きを進めましょう。

また、資産管理計画は一度立てたら終わりではありません。ライフステージの変化(引っ越し、転職、家族構成の変化、収入の増減など)や、法改正、経済状況の変化などに応じて、計画が現状に合わなくなることがあります。そのため、定期的に(例えば年に一度など)計画を見直し、必要に応じて修正することが非常に重要です。

パートナーとのコミュニケーションを密にすることも欠かせません。資産状況の共有、目標の再確認、計画の進捗状況などを定期的に話し合うことで、お二人で協力しながら安心して将来を築いていくことができます。

専門家の活用も視野に

資産管理や将来計画は、専門的な知識が必要となる場面も少なくありません。一人で、あるいはパートナーと二人だけで進めるのが難しいと感じる場合は、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

ファイナンシャルプランナー(FP)は、家計全体の状況を分析し、ライフプランに合わせた資金計画や資産運用、保険、税金、相続などについて総合的なアドバイスを提供してくれます。また、法的な手続きについては弁護士や司法書士、相続税については税理士といった専門家が力になってくれます。

近年は、LGBTQ+コミュニティへの理解があることを明示している専門家も増えています。「LGBTQ+フレンドリー 専門家」といったキーワードで検索したり、信頼できる情報源から紹介を受けたりすることで、安心して相談できる専門家を見つけやすくなっています。

まとめ:パートナーと共に安心な未来を築くために

LGBTQ+カップルがパートナーとの資産を「見える化」し、管理・運用計画を立てることは、将来の安心を確保するための非常に価値のある取り組みです。

  1. 資産の「見える化」: まず、ご自身とパートナーの資産・負債を全てリストアップし、現状を正確に把握します。
  2. 分析と課題特定: リストをもとに資産状況を分析し、LGBTQ+カップルとして考慮すべき点を含めた課題を特定します。
  3. 目標設定と計画策定: 将来の具体的な目標を設定し、それを達成するための貯蓄、投資、法的な備えなどを含む管理・運用計画を立てます。
  4. 実行と見直し: 計画を実行に移し、定期的に見直しを行うことで、変化に対応しながら着実に目標に近づきます。

このプロセスを通じて、お二人の経済的な基盤を強化し、予期せぬ出来事にも対応できる柔軟性を身につけることができます。時間はかかるかもしれませんが、パートナーと協力し、必要に応じて専門家のサポートも借りながら、一歩ずつ進んでいきましょう。この記事が、皆様がパートナーと共に安心できる未来を築くための、具体的な行動を始めるきっかけとなれば幸いです。