安心してパートナーと築いた資産を守る:LGBTQ+カップルが知っておくべき詐欺・悪徳商法リスクと対策
はじめに:大切な資産をリスクから守るために
パートナーと共に人生を歩み、共に築いてきた大切な資産は、お二人の将来の安心を支える基盤となります。しかし、残念ながら、その大切な資産が詐欺や悪徳商法といった思わぬリスクに晒される可能性もゼロではありません。特に、高齢期に入ったり、何らかの理由で判断能力が低下したりした場合、詐欺グループのターゲットになりやすくなるリスクも高まります。
LGBTQ+カップルにおいては、法的な関係性が十分に認められていない状況下では、お互いの財産管理への関与が難しかったり、いざという時に第三者からの不当な働きかけに対して守りが手薄になったりする懸念も考えられます。
この記事では、パートナーと築いた大切な資産を詐欺や悪徳商法から守るために、どのようなリスクがあるのかを知り、具体的な対策をどのように講じれば良いのかを、丁寧にご説明いたします。
詐欺・悪徳商法の手口を知る
詐欺や悪徳商法の手口は巧妙化しており、日々新しいものが生まれています。しかし、その多くは、人の不安や欲望につけ込んだり、冷静な判断力を失わせたりすることを狙っています。代表的な手口には以下のようなものがあります。
- オレオレ詐欺・還付金詐欺: 親族や公的機関職員などを名乗り、緊急性を装ってお金をだまし取る手口です。「病院にいる」「税金が戻ってくる」といった言葉で慌てさせ、冷静に確認する時間を与えません。
- 未公開株・社債詐欺: 上場確実などと偽って、価値のない株や社債を購入させる手口です。専門的な知識がないことをいいことに、儲け話をちらつかせて誘い込みます。
- 投資詐欺: FXや暗号資産など、流行の投資話を装い、「絶対に儲かる」「元本保証」などと謳って投資をさせ、お金を持ち逃げしたり連絡を絶ったりします。
- 点検商法・送りつけ商法: 「無料点検」などと言って自宅を訪問し、不安を煽って高額なリフォーム契約を結ばせたり、一方的に商品を送りつけて代金を請求したりする手口です。
- 当選詐欺・架空請求詐欺: 「当選した」と偽って手数料を請求したり、身に覚えのないサービス利用料などを請求するハガキやメールを送ったりする手口です。
これらの手口は、誰にでも起こりうるリスクです。大切なのは、「自分は大丈夫」と思い込まず、常に警戒心を持つことです。
資産を守るための具体的な対策
パートナーと築いた大切な資産をこれらのリスクから守るためには、日頃からの準備と心がけが非常に重要です。
1. パートナー間での情報共有と「見える化」
最も基本的な対策は、お互いがどのような資産を持っているか、どのようなお金のやり取りをしているかを、パートナー間でしっかりと共有しておくことです。資産の状況を「見える化」することで、一方だけに情報が偏ることを防ぎ、お互いが異変に気づきやすくなります。
- どのような銀行に口座があるか
- どのような保険に加入しているか
- どのような有価証券(株式、投資信託など)を保有しているか
- 不動産やその他の高額な資産があるか
- 毎月の収入や支出の状況
これらを定期的にパートナーと話し合い、リスト化しておくことをお勧めします。共有のGoogleスプレッドシートを利用したり、エンディングノートに記載したりするなど、方法は問いません。大切なのは、お互いがいつでも確認できる状態にしておくことです。(参考:将来のために:LGBTQ+カップルがパートナーと共有する資産をリスト化するガイド)
2. 不審な電話・メール・訪問への対応ルールを決める
詐欺の多くは、突然の連絡から始まります。以下のような対応ルールをパートナー間で決めておくと良いでしょう。
- 不審な電話には即答せず、「一度パートナーと相談します」などと言って電話を切る。
- 知らない番号からの電話には出ない設定にする、留守番電話を活用する。
- 不審なメールに記載されたリンクはクリックしない。
- 突然の訪問者には安易に玄関を開けない、身分証明書の提示を求める。
- お金の話が出たら、必ずパートナーや信頼できる第三者に相談する。
特に、「今日中に決めないと」「あなただけに特別な話」といった、契約を急がせる言葉には要注意です。
3. 公的機関や専門家を積極的に活用する
一人で判断したり悩んだりせず、外部の力を借りることをためらわないでください。
- 消費生活センター: 悪徳商法に関する相談に乗ってくれます。消費者ホットライン「188」(いやや)に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。
- 警察: 詐欺事件に巻き込まれた可能性がある場合は、すぐに警察に相談してください。
- 金融機関: 不審な振込指示があった場合など、取引先の金融機関に相談することも有効です。
- 専門家:
- 弁護士: 法律的な観点からのアドバイスや、被害回復のための手続きについて相談できます。
- 司法書士: 不動産の名義変更や成年後見制度に関する相談が可能です。
- ファイナンシャルプランナー(FP): 資産全体の状況を把握し、リスク管理を含めた総合的なアドバイスを提供できます。
信頼できる専門家との関係を築いておくことは、詐欺対策だけでなく、健全な資産形成のためにも非常に有効です。(参考:LGBTQ+カップルが資産形成・相続を専門家に相談する:相談先選びと進め方)
4. 判断能力の低下に備える制度の検討
将来、もしパートナーの判断能力が低下した場合、資産管理が難しくなったり、詐欺被害に遭いやすくなったりするリスクが高まります。これに備えるために、任意後見制度などの活用を検討することができます。
- 任意後見制度: パートナーが元気なうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に、あらかじめ決めておいた人(任意後見人)に、どのようなことをしてもらうか(財産管理や療養看護など)を契約で決めておく制度です。これにより、万が一の時でも、信頼できるパートナーが財産管理などを代わりに行うことができます。(参考:もしもの資産管理を任せるなら?:LGBTQ+カップルのための成年後見制度と任意後見制度比較ガイド)
この制度を活用することで、法的にパートナーに財産管理を任せることが可能となり、外部からの不当な働きかけに対する防御力を高めることができます。
もしパートナーが被害に遭ってしまったら
もし、パートナーが詐欺や悪徳商法の被害に遭ってしまったことに気づいたら、まずは冷静に対応することが重要です。パートナーを責めるような言動は避け、何が起こったのかを正確に把握することに努めてください。
そして、すぐに消費生活センターや警察に相談してください。被害に遭った直後であれば、お金を取り戻せる可能性が残されている場合もあります。また、今後の再発防止のためにも、専門機関からのアドバイスを受けることが大切です。
まとめ:パートナーと共に、安心な未来を築くために
パートナーと築いた大切な資産を詐欺や悪徳商法から守ることは、お二人の安心な将来を守ることにつながります。そのためには、詐欺の手口を知り、日頃からパートナーと情報共有を行い、不審な働きかけに対しては毅然とした態度で対応することが重要です。
そして、一人で抱え込まず、公的機関や信頼できる専門家を積極的に頼ることをためらわないでください。任意後見制度のような事前の備えを検討することも、将来のリスクに対する有効な対策となります。
パートナーと協力し、お互いを支え合いながら、この記事で得た知識を活かして大切な資産を守り、安心な未来を築いていくための一歩を踏み出していただければ幸いです。